自民党の税制調査会(税調)で来年度の税制改正についての議論が佳境を迎えています。
税調では法律改正を伴う議論が行われますが、民間からの要望の中には税法を変えなくても、解釈の明確化など運用改善で実務上有益な結果を得られることがあります。
今回は先日の事例を紹介します。
企業が福利厚生の一環として社員に食事を提供する場合、
①「食事の価額の半分以上を従業員が負担」
②「企業側の負担が従業員一人当たり月額3,500円以下」
を条件に、その食事が給与課税されない取扱いがあります。
ただし、自社で社員食堂を運営するような「使用者が調理して支給する食事」(※)の場合、「食事の価額」は「≒材料費」として解釈されますが、運営を外部委託して食材の在庫管理などを自社で行わない場合に、「使用者が購入して支給する食事」(※)とみなして、「食事の価額」を「材料費以外の外部委託費も含まれる」と解釈されると、給与課税非課税の要件を満たすことが難しくなります。そこで、取扱いを見直してほしいとの要望がある業界団体から党に寄せられました。
※ 所得税基本通達(抄)
(食事の評価)
36-38 使用者が役員又は使用人に対し支給する食事については、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に掲げる金額により評価する。
⑴ 使用者が調理して支給する食事 その食事の材料等に要する直接費の額に相当する金額
⑵ 使用者が購入して支給する食事 その食事の購入価額に相当する金額
そこで、早速、政府に解釈について確認しました。「外部委託による運営であっても、材料費とそれ以外の経費を適正かつ明確に区分されているなど一定の場合には「使用者が調理して支給する食事」と解して差し支えない」との回答が得られました。
これにより、社員食堂の材料費の区分経理をし、冒頭の条件を満たせば給与課税されないということが明確になりました。結果、要望実現には法改正は必要ありません。社員食堂をお持ちの企業の方には是非参考にしていただければ幸いです。
来年度税制改正に向けた、自民党の組織運動本部や政務調査会、税調での大きなテーマは研究開発や起業を促す税制のほか、自動車への車体課税、個人投資家を増やす金融所得課税の見直しなど。近く、与党税制大綱で正式決定されます。
個人的には2021年春から最も時間とエネルギーを注いだ船舶の法人税制の改革が実現します(特別償却制度の大幅拡充)。香川を中心に瀬戸内海には造船所が多くあります。地方の雇用を維持し、経済安全保障にも資する税制改正の一助になれ、とても喜んでおります。